冷凍肉を解凍する際に注意しなければならない点は、解凍する温度帯による細菌の繁殖です。 特に常温で解凍の場合は表面温度が上昇して細菌が増殖しますのでお勧めできません。 やむを得ずする場合は、解凍直後に調理する場合に限定した方が良いでしょう。
「解凍肉は日持ちが悪い」等と言われますが、解凍する温度が高いと細菌が増殖して、いちじるしく鮮度が低下してしまうためです。 又、解凍によって肉汁を含んだドリップが生じ、それに起因する細菌の繁殖が盛んになります。 さらに緩慢(ゆっくり)凍結した際には、細胞組織の破壊によるドリップがより多く生じますので、その度合いがさらに大きくなります。
コンテナ、又はボール(発砲スチロールの箱等最適です)に水を入れさらに氷を砕いて入れ水温を出来るだけ0℃に近付けた冷水を張り、真空パック肉のまま入れて解凍します。
肉のパック表面に薄い氷の膜が出き食品の表面温度を上げることなく解凍することが出来ます。 この方法はレストラン厨房だけでなく、ご家庭でも手軽に出来るのでおすすめの方法です。
※注意・・・輸送中や取り扱いにより、真空パックに傷や小さな穴が開くことがあります、肉と真空袋が密着していない物は氷水につける際には、念のため2重にしたポリ袋等に入れて出来るだけ空気を抜いて口を輪ゴムで、ぎゅうっと縛ることをおすすめいたします。
氷点解凍法のポイントとして2点あります。
1つ目は、ほとんど0℃に近い温度の氷水によって肉の表面が守られるという点です。 このことは、「凍結肉を低温で解凍することによって、肉表面の細菌繁殖などによる肉の変質をおさえ解凍後の肉の保ちを良くする。」などの効果があります。
2つ目は、「空気より熱伝導率の高い液体(氷水)を使うことによって早く解凍できる」と言う点です。 早く解凍することによって、最大氷結晶生成帯を早く通過させ、細胞組織の中の氷の結晶の増大を防ぎ、肉の細胞組織の更なる破裂を防ぐことができます。 氷漬けの鹿肉が、氷は凍ったままなのに鹿肉だけ解けます! 鹿肉がプリプリしています! 狩人の蔵ではこの方法を用いて解凍しています。 解凍の状態の良さはもちろんですが、解凍後の食肉の鮮度維持が格段に違うことを体感できます。
■流水(水道水)で解凍する方法は、熱伝導的には、効率的な解凍方法ですが、肉の温度が上昇してしまい急激に鮮度が低下してしまいます。 また、マグロや鹿肉等のブロックで解凍する場合は、表面が解け過ぎますと、ちょうど断熱効果が発生して、逆に解けにくくなってしまいます。
■冷蔵庫で解凍する方法、一般的に用いられる方法かも知れませんが、時間が掛かる為、熱伝導から考えても良い方法ではありません。 時間の掛かる解凍は、氷の結晶が成長して大きくなってしまいます。 結果、肉の細胞組織を破壊して、解凍後著しく肉の品質を低下させる原因となります。
※緩慢(かんまん)解凍の場合など、やはり氷の結晶が大きくなり細胞繊維を破裂させてしまいますので注意が必要です。
■常温で解凍する方法は当然のことですが、食肉の表面の細菌の繁殖が活発になってしまいます。 まして厨房という暖かい環境は、なおさら細菌の繁殖が活発になってしまいます。 したがって衛生面に問題があり、おすすめできない方法です。 また表面だけ解けてしまうと、断熱効果が作用してかえって解けにくくなってしまうのです。
肉の表面は長い時間常温にさらされる為に変色をしやすくなっています。 解凍後の食肉の日持ちも著しく短く、食肉を加熱調理した後も細菌的に心配があります。
例えば、肉の表面が柔らかくなった後に冷凍庫に入れて解凍したとしても、一度増えた細菌は減ることはありません。 鮮度保持および安全上、やってはならない解凍方法です。 また、思ったよりも空気の熱伝導は遅く、液体の熱伝導より時間が掛かってしまいます。